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「明日のハナコ」の上演と、嬉しい話。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

上演してくださるのは、多摩美術大学演劇舞踊デザイン学科演劇舞踊コース9期生の三輪しおりこさんと学生有志。
 
日時 2024年1月11日(木)〜12日(金)
場所 多摩美術大学上野毛キャンパス内のスタジオ

「個人の企画であることと、授業でも使うようなスタジオでの公演なので、学内だけでの発表(多摩美の学生のみ観れる公演)にはなってしまうかと思います」ということなので、一班の方が見られないのはしごく残念ですが、でも、こんなに嬉しい話はありません。
 

「明日のハナコ」上演のお話をもらうたびにいつも思うことですが、こんなに不幸せで、こんなに幸せな劇はまたとないなあと。不幸せというのは、オリジナルの、福井農林高校の生徒たちが作った劇がいまだに封印されたままで記録映像も見られないままだということで、幸せというのは、封印されればされるほど、ハナコたちは力強く、遠くまで羽ばたいているということです。

 

三輪さんともう一人の方が舞台に立たれるそうですが、お二人とも高校演劇出身だそうです。もと演劇部員。「少しでも多くの同世代にこの物語を巡る背景も知ってもらえたらと思い上演を考えています!」
なんだかもう。
オジサンは涙腺がゆるくなってるからね。こんなセリフには弱いんだよもう。

 

多摩美大の学生さん職員の皆さん、ぜひ年明けにはスタジオに足をお運びください。

 

 

あとはまたちょっと付け足しです。おじさん、話が長いんだってば。
高校の先生をしていた頃、修学旅行の引率で沖縄に何度か行きました。南の島。美しい海。珊瑚礁。羽目を外す生徒。ホテルの夜の見回り。夜中の説教。寝不足。だんだん不機嫌になる教員。そんな三泊四日のすったもんだの旅先でふと目に入ったのが地元の新聞です。沖縄県民が主に講読する地方新聞。
びっくりしました。
一面トップが基地問題でした。それも毎日。
いやいや基地の問題は大事です。日本国民としてちゃんと考えていなければいけない大事な問題です。でも、例えば僕が住んでいる福井県の新聞に、沖縄の基地問題が一面トップで載ることがあるか。ないとは言えないけれど、連日紙面を賑わせることは、ない。僕たち福井県民と沖縄県民との間には、情報の質においても量においても格段の差があったんです。

(この際、ネットニュースは横に置いておきます。ネットは平等に情報を拡散させうる媒体ですが、残念なことに、その話題について関心がなければそれについての情報をまったく取得できないという、ある意味とても不完全なメディアだと思います)

 

そんで思ったんですね。もしかして、福井県外の人たちには、原発について情報が入ってこないんじゃないかと。僕がそうであったように、「知っているつもりで」実は「詳しくは知らない」んじゃなかろうかと。
福井の新聞だとほぼ毎日、なにかしらの原発の記事が載ります。もちろん原発反対、みたいな記事はあんまり載りません。そのへんは「大人の事情」というヤツなんでしょう。でも注意深く読むと、原発を巡るさまざまな問題点が書かれています。たとえば2023年12月22日の福井新聞にはこんな記事があります。
「県の原子力政策を巡り質問と要望書を提出していた反原発4団体が県庁を訪れ、担当課の職員と面談した」「関西電力が原発敷地内で使用済み核燃料を一時保管する『乾式貯蔵施設』の設置を検討していることについて、県に拒否するようあらためて求めた」


使用済みの核廃棄物は、日本中どこにも持っていく場所がないので、今は原発の敷地内に置かれているんです。原発が稼働すればするほどそれは増えていくので、数年後には置き場所がなくなってしまう。地下深くに埋めたらいいだろうという話もありますが(それは「明日のハナコ」でも描きましたが)、じゃあうちの町の地下に埋めていいよ、なんて言う人はいないので、今のところ机上の空論です。それで次に出てきたのが『乾式貯蔵施設』で、簡単に言えば従来のものよりもコンパクトに廃棄物を保管できるというものです。これが実現できれば、まだまだ原発を稼働できる・・・んだけど、やっぱり原発の敷地内にどんどん廃棄物がたまっていくわけです。「原発はトイレがないマンションだ」と誰かが言ってましたけど、これ、いったいどうなるんでしょう。放射性廃棄物をなくすような、夢の技術はまだ存在しないんです。ほんと、大丈夫なんでしょうか。

これは福井県民なら普通に新聞から得られる知識です。でも、もしかしたら、こういう情報は原発立地県以外ではあんまり知られていないかも知れない。あるいは知っていてもたいした関心は持っていないかも知れない。ちょうど、僕が沖縄の基地についてそうであったように。

三輪さんはこんなことも言っておられました。
「福井の高校生の日常の思考の中には原発という存在があるのだと知りました。それは私にとって衝撃的なことでした。恥ずかしながら、原発から離れて暮らす当時の私にはとても馴染みのない問題で、正直自分には関係ないと思っていたからです。私と同じく大学にいるみんなが経験したことのある高校生という存在がこの問題について語ることで、『この作品を巡る問題についてまず知ってもらうこと』『ハナコたちの明日を少しでも考えてもらうこと』に繋がるような気がしています。」

こんな若者がいるんです。
この国は素敵な国だなあと思います。
ほんと、オジサンは涙腺がゆるいんだからね。もう。

                                      (玉村徹)

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