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◆共立女子大学・共立女子短期大学の「明日のハナコ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

またひとつ、お知らせが届きました。

 

このたび「現代社会の諸課題(文化・芸術)_01」(指導・村井華代)では、授業成果発表会として、すべて履修生手作りによるリーディング公演(台本を読むスタイルの演劇)をおこないます。学内・学外の皆様に公開しますので、お気軽においでください。

 

★★★リーディング『明日のハナコ』★★★

作:玉村徹

脚色:「現代社会の諸課題(文化・芸術)_01」台本係

上演: 共立女子大学・共立女子短期大学 2024年度「現代社会の諸課題(文化・芸術)_01」履修生

【日時】2024年7月6日(土) 開演15時30分(開場15時)

 ※終演後、履修生によるアフタートークをおこないます

【場所】共立女子大学 神田一ツ橋キャンパス 3号館 6階 610号室

 〒101-0051 東京都千代田区神田神保町3丁目27

・入場無料

・予約不要 

・学外の方もご自由にご来場いただけます

 ※会場である3号館入り口でお名前をご記入の上、係の者から入館証をお受け取りください。

 

 

「学外の方もご自由に」というのがいいです。僕もお金があったら行きたいです。皇居の横っちょで神田神保町の近くでしょ。あそこの古本屋街をハシゴしてカレーを食べてた学生時代が懐かしいです。みなさん、ぜひ行ってみてください(^^ゞ。

 

 

 

話はいきなり私事になりますが、不肖タマムラ、仲間を集めて劇団を作ったんです。劇団つったって今んとこメンバーは僕を入れてまだ五人。しかも僕以外はみんな若い。二〇代とか三〇代とか。僕なんか御年六三才ですからほんとおじいちゃんで、なんかいつもいたわられてる。先生、荷物持ちますよ。先生、階段です。先生、座っててください、あとは僕らでやりますから。ええい、わしゃもう先生はやっとらんのじゃあ。年寄り扱いはやめんかあっ。

 

でも一番困るのは、話題が合わないことです。たとえば「風の谷のナウシカ」をまともに見たことない、なんて平気で言う。まてまてまてまてまて。嘘だろ。「ナウシカ」は見なきゃダメだろ。あれ見ないなんてヤツが日本にいるのか。そんなヤツに選挙権与えていいのか。憲法違反じゃないのか。僕なんか「ナウシカ」のセリフ、最初から最後まで全部言えるのに。←おいおい。

 

でもそれも無理はない。うちの連中が生まれたときには、もう、「ナウシカ」は存在していた。そしてそのあともたくさんのアニメが作られてきた。それも膨大な数。だから「生まれる前の作品」にまでは手が及ばない(ちなみにうちの連中はつかこうへいも野田秀樹も鴻上尚史も知らなかったんですけども。アカンやん(>o<))。

 

僕たちは常に、世界に遅れて生まれてきます。僕たちが生まれるずっと前から世界は存在しています。その世界は圧倒的に巨大で複雑で不可思議で、僕たちはそのなかにおずおずと足を踏み入れる転校生にすぎません。図書館に行ってみればわかります。どれほど時間があっても、その蔵書すべてに目を通すことは出来ません。僕たちに出来るのは、世界のほんの一部をかじることくらいです。そして、いつまでかじり続けることくらいです。知らないことに出会ったら、できる限り知ろうと努めることくらいです。

 

たとえば僕だって、太平洋戦争のことはわかりません。僕が生まれたのは戦争が終わって15年も経ってからです。その頃には戦争の爪痕はどこにも残っていませんでした(ていうか、僕の目には映りませんでした)。何かの時に母親に尋ねてみたんですが、

「このへんは大丈夫やった。ほやけど、福井の町の方は空が真っ赤やった」

と、これだけ。その真っ赤な空の下では、何千という人々が逃げ惑い、焼け死んでいたんですが、母もそれはよく知っていたはずですが、ついに詳しいことは語らずじまいでした。言いたくなかったんだろうと思います。つらくて。悲しくて。悲惨で。むしろそういうことを子どもには語らないようにしていた節がある。知らせないようにしていた節がある。そんなことは知らせずに、僕たちに何不自由ない暮らしをさせることに、全力を傾注していた節がある。

 

それは親たちの努力であり愛情であり、たぶん誇りでもあったんじゃないかと思います。でも、それでは駄目だとも思います。語られないことは、ないものと同じです。黙っていたんじゃ伝わらない。伝わらないものは失われる。そうじゃなくて、語って語って語り通す、そうしなきゃ戦争は防げないんだよ、かーちゃん。

 

「明日のハナコ」を上演するみなさんは、村井先生がいなかったら、こんなことがあった、ということも知らないままだったかもしれません。それは仕方ありません。この世界には、「明日のハナコ」の他にもいろんな問題がある。原発の他にもいろんな問題がある。そのすべてを知ることは出来ません。そのすべてを解決することはもっとできません。けれども、だからやめて知らぬふりをするか、それともかじり続けるか、それを選ぶことは出来ます。

 

 

かじり続けることは果てしない道です。苦労が多い。疲れる。バカにされる。「なに真面目ぶってんだよう」とか「出来もしないことをやり続けるなんてどっかオカシイんじゃないの?」とかいろいろ言われる。

でも、それは、たぶん、大人になる、その道の第一歩なんです。

 

どうか、みなさんがまっすぐに進まれんことを。

                                               (玉村徹)

            

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